第26章 京に立っ薫煙
静慘とした空気の漂う離宮とは一転
二条城中庭ては男達の笑い声が響いていた。
「親王様は本当にお上手だ」
「光秀も上手いぞ」
誠仁親王が声をかける。
青年が少年の顔で光秀を褒め笑う。
「おおーっと、これはこれは、突然褒められて足捌きを間違ってしまいました。
其方、鞠を取って来てくれないか」
あらぬ方向へ蹴ってしまった鞠を、
光秀は拾ってくるよう、脇で見ていた男に頼んだ。
「褒めたそばから、大失敗とはな、光秀」
「それは親王様が突然お褒めになるからで御座います」
「あははは、お前でも緊張するのかっ」
親王の笑返しながら、金色の瞳は、男の行った方を探るように見ていた。
「鞠が戻って参りました。
続けましょう」
探しに行った男とは違う男から、何事もなく鞠を受け取った光秀が、親王に再開を促した。