第20章 嫌ワレ毛虫来客ス
「嫉妬……」
「そうだ。
黒い気持ちになる。
自分の物を取られて、憎いみたいな」
心当たりがあるみたいな表情になって、
恥ずかしそうに俯いた。
「済みません…」
「謝るなよーー。
俺、すっげえ嬉しいのに」
俺の言葉に顔を上げた瑠璃。
不思議そうな表情をしている。
「嬉しい?どうして…」
「どうしてってー…お前……
俺のこと好きだから、毛虫のおっさんなんかに嫉妬したんだろ」
そう言う事なのだ。
でも、瑠璃には解らない。
何故なら、初めての感情だから。
「誰かに大切なモノを持って行かれる気持ち、初めてなのか?」
驚いて啞咽とした。
「はい」
(…愛情以外は与へられていたとしたら。
他人にも自分にもあまり頓着しない瑠璃)
あり得なくもないな、と思える。
そんな瑠璃が、
(初めて執着するモノが俺か)
悪い気はしない、どころか、
気分が良い。
小踊りしそうに嬉しい。
※啞咽…あいん/驚いて あ の声を飲み込む。