第20章 嫌ワレ毛虫来客ス
秀吉の困った顔。
「お前もやりにくいよな。
そろそろ帰って頂くから辛抱してくれ」
秀吉がポンッと瑠璃の肩に手を置いて、
「分かってくれ」と言った雰囲気で歩いて行った。
城内で秀吉の姿を見かけた瑠璃は、
らしくないほど衝動的に秀吉を呼び止めていた。
「瑠璃、なんだ?」
「あの……お客様は、いつまで…」
秀吉は困った顔をした。
(本当に私はどうしてしまったんだろう)
「瑠璃さん、羊羹たべなーい?」
と言って突然美弥が入ってきて、
針子部屋に連れて行かれ、
お茶と羊羹を出された。
美弥が針子部屋の襖を開けた途端
「キャァァー、瑠璃ぁ〜っ!」
「どうぞ、どうぞ、散らかってますけど」
「綺麗ね、綺麗っ」
「緊張しちゃう〜」
黄色い声に迎えられ驚いたが、
キャアキャア言われ、わいわい言っている間に、さっきまでのモヤモヤは何処かに忘れていた。
(女同士のお喋りも悪くはないものなんだ)
瑠璃には待て無かった時間だった。