第11章 西国の2人
瑠璃は光秀の前に横座りで乗り、
周防の海沿いの道を馬に揺られていた。
「海ですねー…」
「海だな」
(馬の蹄の音って本当にパカパカ…なんやな)
瑠璃はそんな呑気な事を考えた。
遠くに波の音、
砂を踏む蹄の音。
風が吹いて木の葉が揺れる。
「「………」」
瑠璃は空を仰ぎ見る。
(空、高いなーー…)
「自由っていいですね……」
そう思っていても、手放しで手を叩いて、
『自由万歳!』と言う程の覇気がない。
「良い、と言う割に、気のない声だな」
自由を噛み締めていると言う、感慨深い声でもない。
「それほど、良いものでもなかった、か」
「いえ……良いです。
でも…人って、変ですね……」
光秀は瑠璃の静かな声を、
黙って聞いている。