第9章 西国見聞録
「夫婦が駄目なら情人でも良いのだぞ」
「…思い人とか、情人とか……
…光秀様とはそんな不確かな関係には、
なりたくありません。
…偽りだとしても……」
(今好きでも、心は変わる。
いつか離れていくかもしれない関係より)
真っ直ぐでありつつ、切とした銀鼠色の瞳。
(思い人よりもっと、大切な者…
そう思ってくれているのか…)
情人よりもっと深い、
他人ではない関係を瑠璃が自分に望んでくれているのだと光秀は気付く。
フッ…
「血縁を選ぶと言うのか…。
本当に、よく出来た可愛い妹だ」
光秀は距離をつめると、得意げに微笑んでいる瑠璃の前髪を上げた。
そして、
そぅっと、額に口付けをした。