第9章 西国見聞録
宿に帰った光秀の前で瑠璃が、
ニコニコとすこぶる機嫌が良さそうに笑っている。
「…瑠璃…おおよその事は予測出来るが、
わざと連れて行かれた訳ではないだろうな」
「まさかそんな事は、しませんし。
元就様の顔さえ知らなかったのですから。
偶然です」
「偶然、ねぇ」
そう胸を張って言われても、
どうも、俄には信じられない。
(俺も、こう、思われているのか…)
『光秀!本当の事を言え!
嘘をつくな、お前は信用ならない』
光秀の脳裏に、目くじらを立てて追いかけてくる秀吉の顔が思い浮かんだ。