第13章 ケイオス
この間一生懸命頭を回して考えた作戦を伝えるべく口を開けば、すぐさま緑谷がこちらを見下ろす。
『轟くん、緑谷くんも知ってると思うけど左側の個性は絶対に使わないんだ。だから常に彼の左側に、』
「ああなるほど、わかった!!」
まだ話し始めたばかりだというのに、すぐさま理解したであろう彼は間入れずに皆に指示を出し始める。
「みんな、常に距離をとって彼らの左側について。そうすれば轟くんも下手に右側の個性は使わないだろうし、万が一使ってきてもそれは次第にあっちの不利になる…ありがとう希里さん。このまま逃げ切ろう!」
『話が早いね…』
「御意、では行くぞ」
「おっけい!!」
…
…
それから5分間。
さっきの作戦を実行すれば、なんとか今の所残りの時間をうまく逃げ切れている。
しかし次第に皆の体力は削られていき、徐々に足元がもたつき始めているのに気づく。
ここまでなんとか一千万を守り続けているが、残りあと1分、向こうが最後の手段を仕掛けてこないはずもなく。
突然動きを止めた轟チームと、先頭で何かを話している様子の飯田。なにか仕掛けてくる、そう直感すればなんとか緑谷に伝えようと口をひらく。
しかし、
「えっ…!?」
目にも留まらぬ早さで轟たちが突っ込んできたかと思えば、なにが起こったかわからないまま大きな風が横切った。何事かと振り返れば、いつの間にか轟の手へと奪われてしまったハチマキに思わず絶句する。
(ここまできて…!!)
「そんな!?取り返さなきゃ、」
「上鳴がいる以上攻めでは不利だ!他のポイントを取りに行く方が現実的では!?」
「だめだ!他のポイントの散り方を把握できてない、ここしかない!」
ポイントをあっけなく取られてしまったこの状況に、困惑と焦りが皆を襲う。しかしどんなに慌てて考えた所で、彼らからポイントを奪い戻す以外に道はなさそうだ。
「…よっしゃあ!取り返そうみんな、絶対ッ!」
「ッ!!麗日さん…」
『お茶子!!個性でみんなを浮かして!』
「え!?でももうトバリちゃん、」
『大丈夫!最後の勝負だ、まかせたよ!』
「希里さん…ッ!!!お願い!!!」