第11章 タイムオフ
USJ襲撃事件翌日、学校は臨時休校となり私は自室で暇を持て余していた。
春先から実家を出て学校の近くで一人暮らしを始めた私は、自分だけの小さな空間をそこそこ気に入っている。
自由に自分の好きなことができるこの空間は実家より何倍も心地が良かったが、今日に限ってはどうしても落ち着かなかった。
何度も昨日の出来事が頭に浮かべば、休もうにも思考はあちこちへと駆け巡る。
これじゃ休もうにも休めない。
(…気分転換にランニングでもしに行こう…)
ソワソワと落ち着かない体を鎮めるためにも、運動着に着替えればいつものランニングコースへと部屋を後にした。
入学祝いで母からもらった無線イヤフォンを耳に差し込めば、プレイリストから適当に曲を選ぶ。
適当に選んだ最近流行りのポップなリズムが流れ出せば、自然と足取りも早くなる。身も心もその鮮やかな曲調に支配された気になり、なんだかやっと頭が空になった気がして。
久しぶりに訪れた有意義な時間に、いつものコースを超えてつい隣町まで走りこんでしまっていた。
…
…
どうやら調子に乗り予定よりずっと遠くへと走り込んでは、気付けばだいぶ息も切れていることに気づく。
ここらで水分補給を兼ねた休憩でもしようと、近くの目に入ったコンビニに立ち寄ればなんと偶然にも知っている顔に出くわしてしまった。
「…ッチ」
『人の顔見た途端舌打ちしないでよ』
「うるせーよ」
うっすら額に汗をかいたトレーニングウェア姿の爆豪は、どうやら同じくランニングでもしていたらしい。
特に仲がいいわけでもないが(むしろ嫌われているに近いだろう)珍しく少し人と話したい気分だったこともあり、せっかくなので不機嫌そうな彼についていきながら一方的に話つづけた。
『爆豪も落ち着かないから外にでたの?』
「はあ?!ちげえよ!!」
『私もなんだかずっと昨日のこと考えちゃってて、疲れちゃったんだよね』
「ちげえって言ってんだろ一緒にすんな死に急ぎ野郎が」
『…なにそれ新しいあだ名?』
「しるかよボケ」
『ふーん…』
まるで会話にならないがそれでも根気よく話を続ける。