第10章 コンバット
◇◇
飯田くんに事情を聞いたオールマイトが駆けつけてくれてすぐ、気を失ったボロボロの相澤先生を担ぎ僕たちはそのまま出口へと避難していた。
しかしどんどん中心から遠ざかる一方で、僕の不安と葛藤は膨れ上がり続ける。
この場で僕だけが知っている、オールマイトの秘密。きっと活動時間も限界な上、僕のスマッシュが効かなかったあの脳無と呼ばれた巨体の男を相手している。
僕だけが知っている、彼のピンチ。
(なにもせずに置いていくなんて…)
もしヴィラン側にオールマイトを殺す算段が本当にあったとして、それが実行されたら?彼が万が一、本当にしんでしまったら?
(だめだ…僕はあなたに、もっともっと、教えてもらいんだ…)
梅雨ちゃんと峯田くんに相澤先生を託せば、考えるよりも先に駆け出していた足。師の名前を叫びながら走り、溢れる涙と仲間の声を無視してオールマイトへと手を伸ばす。
(オールマイト…!!!!)
しかし彼を捉えていた視界は、突然の闇に覆い隠される。伸ばしていた右手はどんどんと暗闇へと吸い込まれていき、気づいた時にはもう遅く、引き返せる時間はない。
そんなッ––––
そのまま暗闇に身を投げ出す僕の前に、どこからともなく闇は突然光へと変わり、大きな爆発音が僕を包んだ。
いったい何が起こったのかわからないまま足を止めれば、
僕がよく知っている彼は突如として現れ、喉が鳴る。
「どけ邪魔だデェク!」
そのまま爆豪は影の本体らしいアーマーをつかめば、床に殴り落とす。
(かっちゃん!?)
そのまま状況を整理する間もなく、その場の空気が一気にひんやりと温度を落とす。
いつの間にか来ていた轟がオールマイトを掴んでいた脳無を凍らせ動きを封じれば、簡易れず今度は上から降るように落ちてきた希里がオールマイトに触れる。
そしてすぐさま轟の横に瞬間移動してきた希里とオールマイトに、なにがなんだかわからず声をあげた。
「オールマイト…!」
そのまま飛び込んできた切島も加わり、周りをみればそこには大勢の助っ人が集まっていた。
「かっちゃん、希里さん…みんな…」