第8章 ホットヘッド
次の日の朝、押し寄せるオールマイト目当ての報道陣の目を盗みながら登校すれば、相澤先生がいつも通り気だるげにホームルームを始めた。
「…ホームルームの本題だ。急で悪いが今日は君らに、学級委員長をきめてもらう」
(学級委員長か…)
また一段と学校ぽい展開にほっとしたのもつかの間、突然次々と生徒が立候補し始める。一気に騒がしくなる教室に相澤はいかにも面倒くさそうな表情へと顔を歪めた。
そういえばヒーロー科の学級委員長は普通科と違って人気な役割だったなと、ため息をつきながら背もたれに寄りかかった。
確かに学級委員長になれば、それから学べることは多いだろう。しかしどうしても自分につとまる気もしなければ、やる気もそこまで起きることもない。
そもそも人と話すのがあまり得意ではないのに、クラスをまとめるなんて御門違いだ。
ここまで言い訳を並び立てたが何が言いたいかというと、やりたくない。
そんな中、騒ぎを鎮める飯田くんの提案により、学級委員長は投票で決めることになる。まず自分投票はないのでいったい誰に投票しようか考えれば、ふと頭にある名前がよぎった。
彼か…確かに彼なら。
…
…
そして、昼。
学食はいつものように人で溢れていて、私たちはなんとか席を見つけた。
「ん〜お米がうまい!」
満面の笑みで米を頬張るお茶子を眺めながら、私も焼き魚を口に運んだ。
彼女のいう通りここ、ランチラッシュのご飯、そしてその中でも私の好物の焼き魚定食は絶品だ。思わず顔を綻ばせれば、大きなため息を漏らす緑谷に気づき、どうしたのかと横をみて尋ねた。
「いざ委員長をやるとなると務まるか不安だよ…」
朝、結果としてなんと唯一4票を獲得していた緑谷が委員長として選ばれたのだ。しかし当の本人は嬉しがるどころか不安いっぱいという面持ちで、まるで箸が進まずにいた。
「務まる」
「大丈夫さ」
『うん、平気』