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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第7章 ダークブラウン


彼には悪いが、この沈黙を乗り越えられるほどのコミュ力は持ち合わせていない。

確か前にどこかのホームで彼と出会った時私とは反対車線だったのを思い出して、きっと今回もそうだと勝手に思えば私はそそくさと会話を後にしようとした。

「俺もそっちだ」

『あ、あれ…そ、そうなんだ、奇遇だね…』

(いや実家でて引っ越してるの私だ!
 私が同じ方向になったんだ!
 ああああああもう!)

軽くパニックになった頭の中はショート寸前。無理やり笑顔を取り繕えば、目の前に到着した電車のドアが開く。

大人しく観念した私はそのまま無言の彼と電車へと乗り、端っこの席へと座る。そうすれば彼も一つ開けて横にすわるので、もう逃げ場はないと覚悟を決めた。

よし、とりあえず謝ろう、そう決め彼の方へと顔を向ける。しかし私が何かいう前に、今度は彼が喋り始めた。

「俺の親父は万年ナンバーツーのエンデヴァーだ」

『…?そうなんだ』

「…」

『???』

突然聞いてもいないお父さんの話を切り出され、首をかしげる。

エンデヴァーって子供いたんだ、と正直あまり関心がなかったヒーローだったので知らなかった。それも轟くんのお父さんだったのか、なるほど、と妙に納得する。

「驚かないんだな」

『あ、ごめん。驚いてるよこれでも…えっと、それで?』

「…俺の親父、エンデヴァーは自分で成し遂げれなかったナンバーワンの壁、オールマイトを超えさせるためだけに…俺を作った」

『…作ったって…』

それから淡々と轟くんは語り始めた。父親エンデヴァーの野望のこと、個性婚のこと、火傷のこと、そして彼が左側を使わない理由。私はただ黙って、彼が話してくれることを聞いていた。

「俺はあんなクズの道具になんかならねえ…やつの個性も使わねえ。あんなやつの力なんか…使ってたまるか」

『…』

「やつの力なしで俺はトップに立つんだ…それで俺は……」

夕暮れの日差しがみちる穏やかな車内に、まったくそぐわない雰囲気で嫌悪をあらわにする彼。

轟からひしひしと伝わるのは怒り、孤独、そして悲しみ。

少なくともそう見えた私には何を言えばいいか全くわからないし、そうなんだなんて適当な相槌はしたくない。

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