第4章 クァークス
◇◇
「「「個性把握テスト!?」」」
相澤から説明されたものはこれから行われる個性を自由に使える体力テスト。それも8種目あるテストで総合成績が最下位のものは除籍処分となるそうで。初日早々のハードな試練に呆気にとらわれるクラス一同は、言われるがまま第一種目の50メートル走へと向かわされた。
そのまま出席番号順に相澤に呼ばれ始めた生徒たちはレーンへと向かい、そうでない生徒は群がり始める。
まだ時間があると判断した私は少しあたりを見渡し、目的の人物を捉える。
『あの』
「…?」
朝教室で見かけたがどうにも話しかけるタイミングを見つけられなかった私は、なんとか彼に声をかける。
『君、ホームで助けてくれた子だよね。たしか…』
「…ああ、」
忘れようにも忘れらない紅白頭にオッドアイの少年は、こちらの顔をまじまじと見たあとやっと思い出してくれたのか、おまえか、と小さく答えた。
『君も雄英だったんだ。あの時はどうもありがとう』
「別にそんな何度も礼されること、してねえよ」
『いや、助かったのは本当だし。えっと、名前は…』
「………轟焦凍だ。」
『私は希里トバリ。…これからよろしく轟くん』
「…ああ」
『にしても、あの時君も雄英志望だったこと、言ってくれなかったね』
「そうだったか?」
『うん、確か…』
「そうか」
つかみどころのない彼からの返答に、果たしてこれであっているのかよく分からないまま会話を続ける。
切島と再会した時もそうだが、新しい環境で見覚えがある存在がいると多少なりとも安心してしまう。特にホームで彼に助けてもらった時、どうしてか彼との空気感が心地よく、せっかくなら彼を知りたくなった。
『ねえ、轟くんはヒーローになりたいの?』
「…は?」
質問をすれば、突然妙な顔をされる。
確かにヒーロー科にいる生徒に聞くには間抜けな質問かもしれない、だが純粋に彼について気になったのだ。その後少し間をおき、轟くんが答える。
「…ああ、そうだ。じゃなかったらここにはいないだろ」
『どうしてヒーローになりたいの?』
「……」
ここで、なぜか彼の表情が曇り始める。