第21章 サイン
私が今彼を助けないといけないのに、私にしかできないことなのに。
頭ではわかっているつもりでも恐怖と焦りで体が支配されていき、どんどんと冷え切った手足の感覚が消えて行く。
ツバサは何もない空をつかもうと必死にその小さな手を伸ばすが、徐々に力が抜けて行く。
そしていつしか、ツバサのか細い声がぴたりとやんだ。
彼の細い小さな腕はゆっくりと水の中へと沈んで行く。
やだ、助けるよ、だから
死なないで、ツバサ。
おねがい。
お姉ちゃんが今いくから。
弟を殺さないで、かみさま。
やがて、私の体もゆっくりと川に飲み込まれて行く。それでもなんとか彼の元へと泳ごうと体を動かすも、またごぽごぽと水が体内に流れ込んでくる。
なんとか息継ぎをしようにもパニックになった頭は、もはやそれどころではなくなってしまっていて。
怖い暗い苦しい、
いやだ助けて。
目の前が暗い水に覆われ、体が芯まで冷え切った感覚。
そして体が死を直感した瞬間、突然雷のような電撃が体へと流れる。
あ、だめだ、
また。