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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第21章 サイン



『それ、結構いけるよね』

「ああ、うめえ」

『今度また買おっと』

「ああ」

それからしばらく目的の駅に着くまでノンストップで色々な話を二人ですれば、案外轟もおしゃべりな事に気づく。確かに切島や麗日などに比べたら口数は圧倒的に少ないが、別に喋るのは嫌いではないようで。

先ほどまで落ち込んでいた気持ちが少し晴れた気がして、今回の職場体験も案外悪くないかもしれないと思ってしまった。

その時芽生えた私の小さな期待が、大きく裏切られる事も知らずに。





「よく来た」

「…」

『よろしくお願いしますエンデヴァーさん』

事務所に着くや否や、機嫌の良かった轟の顔が唐突に無へと戻る。

確かに轟はお父さんの存在を受け入れようとしている事には違いないが、まだ彼を許したわけじゃないだろう。それを彼の顔つきから察すれば、私も余計な事は言わないようにと軽く挨拶だけする。

「早速だが二人とも。準備しろ、出かけるぞ」

『えっ?』

「どこへ、何しに?」

「前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。しばし保須に出張し活動する」

(ヒーロー殺しって…)

「すぐに保須市に連絡しろ!」

エンデヴァーがそうサイドキックたちに指示を出せば、急な展開に私は驚き轟を見る。しかし彼はジッとエンデヴァーを見ては、何か考え込んでいる様子で。

「何をしている、行くぞ」

『は、はい』

「ああ…」

そのまま促されるまま事務所が用意した車へと乗り込めば、保須市へと向かうべく走り始める。エンデヴァー自身は違う車で向かっているようで、運転手を含む私たち三人だけの車内。

しばらく走っていれば先ほどから静かだった轟が、ゆっくりと喋り始めた。

「…親父は、どんなにクズでもナンバーツー言われるだけの実力と実績がある」

『…』

「今回も判断力と感の良さは、認めざるを得ない…ヤツから学ぶべきことは多い」

『うん、そうだね。でも本当にヒーロー殺しを捕まえれるのかな…』

「…」

飯田の兄を再起不能まで追いやり、数々のヒーローを殺害してきたヒーロー殺しステイン。そんなヴィランをサポート側とはいえ、職場体験で追うことになるとは。到底予想もしていなかった自体に、みるみると緊張していく体。
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