第20章 ブラッドレッド
◇◇
『映画面白かったね』
「まあ悪くはなかった」
「お、お前らスゲえな…」
無事映画が終わり劇場を後にすれば、切島が顔面蒼白な事に気づく。
『あれ、大丈夫?切島くん』
「だ、だ、大丈夫だ…」
確かに映画を見ている最中ずっと、切島は幾度となく小さく悲鳴をあげていた。かく言う私は久しぶりの映画にワクワクして、劇中ずっと浮かれてしまっていて。
ずっと気づかなかったが、もしかして切島はホラーが苦手だったんだろうか。今の彼の反応からして、とても楽しんだようには見えない。
『もしかして怖かった?ごめん気づかなかくって…』
「い!いやちげえ!ただ少し慣れてなくてだな」
「アハハハハクソ髪オメぇ怖がりなんかよ!だせえなオイ!」
「うるせえ爆豪!怖がってなんかねえ!」
『まだ人いっぱいいるから、あんまり騒がないで二人とも…』
映画が終わった後とはいえ、あまりにも大声で喚く二人のせいで周りからの視線が痛い。
これ以上迷惑にならないよう二人の腕を掴めば、急いでその場から退散する。その間ずっと騒ぎあっている二人に呆れれば、子供の世話をするのってこんな感じだろうか、と柄にもない事を考えてしまった。
『で…切島くんこの後どうする?』
「あ、ああ…考えてなかったな」
『映画もそこそこ長かったしお腹すいちゃったかも、どっか食べに行かない?』
「おう!そうしようぜ」
『爆豪もくるでしょ?』
「ハァ!?」
当然のように彼も付いてくるもんだと思っていれば、またこちらを睨み始める爆豪。
「なんでテメエらと飯なんか食わなきゃいけねえだよ、帰るわクソが」
『ええ、せっかくなら食べようよ』
「おう、そうだぜ爆豪!」
「…オメぇなあそれでいいのかよクソ髪」
「ん?なにがだ?」