第20章 ブラッドレッド
どこを見ているのかわからない、座った瞳。表情はいつも通りなのにどこか悲しそうな影を見せる彼女に、俺は勢いよく彼女の方へと体を向けた。
「も、もしさ!また映画、見たくなったら…俺と行こう」
『え?』
「どんなのにでも付き合うぜ!お前が見たいもの、なんでも。だから今度から映画は、俺と行けばいい」
彼女の目をしっかり見ながら、俺は言う。突然妙なことを言い出す俺に、キョトンとする彼女。するとしばらくして今度は彼女の口角が上がれば、クスリと声が漏れる。
『ふふ、映画限定なんだ』
「あ、いや映画限定じゃなくて!お前が行きたいとこ、どこでも!ほら、ショッピングとか…遊園地とか?あとは…他になにがあったっけ…」
『あはは、冗談だよ。ごめんからかって』
「……俺は冗談じゃねえぜ。本気だ」
『…』
どこか誤魔化そうとしている彼女に気づき、俺ははっきりと彼女に告げる。それを聞いた希里はまた無表情に戻れば、今度はゆっくりと俯いてしまった。
「…?ごめん、気を悪くさせること言っちまったか」
『…なんで、そこまでしてくれるの?』
「えっ…」
『私なんかに、なんでそんなに優しくしてくれるの?』
「希里…」
また俺を見上げた彼女は切なそうに微笑んでいた。希里のその悲しげな笑顔に、俺はまた言葉を失う。そして考えるより先に体が動けば、彼女の肩を掴んだ。
『?』
「お、俺は」
言うのか?今。
勢いに任せて、言ってしまうのか。
「お前の事が…」
もし断られたら、どうなる。
このまま、友達のままでいられるのか。
こんなムードもくそもないタイミングで、俺は。
「す、」