第20章 ブラッドレッド
『ごめん、映画なんて滅多に見ないからちょっと迷っちゃって…』
「おう、無理しなくていいぜ!特にこれってんのがないなら今一番人気そうなのを見るってのも手だしな」
『ああ、いいね。今は何が人気なのかな?』
「おう調べてみるぜ!ちょっと待ってろ」
そのまま携帯を取り出して今人気作品を調べれば、上位に上がっていたのはあるホラータイトル。突然画面いっぱいに表示されたおどろおどろしいピエロのポスターに思わず驚き、声を出してしまう。
「うお…」
『ん?どうかした?』
俺の声に気づけば、なんだなんだと俺が持っていた携帯を覗き込む。突然彼女の顔がすぐ横までくれば、今度は違う意味で心拍数が上がる。
『ホラーかー』
「これが今人気らしいけど…別のにするか?」
『これでいいよ』
「え?!こ、これでいいんか?」
『うん、チケット買いにいこうか』
「お、おう」
あの気味の悪いポスターを見ても平然としている彼女に、俺は考える暇もなく頷いてしまう。しかしそのまますぐにチケットの列へと向かってしまう彼女に、俺は足を止める。
正直自分はホラーが得意な方ではない、むしろ嫌いな部類だ。しかしここで怖がって断るのは男が廃る、そう覚悟すればすぐさま彼女の後に続いた。
無事二人分のチケットを買えば、まだ映画上映まで少し時間がある。
「なんか食べるか?」
『そうだね、ちょっとつまむものがあるといいな』
そのまま二人でフードとドリンクが売っているカウンターへと足を運べば、ペアセットのポップコーンと飲み物を頼む。少し早いが、特に他にする事もないので二人でまだ空いている席が目立つ劇場へと入れば席へとついた。
『…最後に映画館いったのなんていつだろう』
「そうなのか?もしかしてそんな好きじゃねえとか…?」
『違う違う、嫌いじゃないんだけど。なんか一人じゃ行きづらくって』
「?親とかダチとかとは一緒に行かなかったのか?」
『……うーん。ない、かな』
「そ、そうか…」
そう言えば彼女はまたあの目をする。