第3章 ~嫉妬の先には~
「ちょ!ちょちょっ!!!先輩!私自分で治せるんで!」
「えっ?」
立ち止まると少し会場から離れた場所に来ていた
人気はさっきよりはない
…
至近距離にヒナの真っ赤な顔がある
心なしか鼓動の音も聞こえるような気もする
「あの…先輩、そろそろおろしてもらって…死ぬほど恥ずかしい…んですが」
お姫様抱っこ
腕の中には好きな人
彼女は赤面している
「ご、ご、ごめんなさい!!」
慎重に近くのベンチにおろすとしばらく気まずい沈黙がながれる
ヒナは頬の赤みを落ち着かせるように両手で頬をさすっている
「はぁ…旭先輩…ほんとなりふり構わずって感じでしたね」
「なんかほら、鼻緒って直すの大変だって聞いたし、どうしたらいいかわからなくて、その…」
ふっと吹き出し大声で笑う
「そう!私は先輩のそういうとこが好きなんです!
これからも、よろしくお願いしますね!」
屈託のないまっすぐな笑みを向けられ改めてヒナが好きだと
自覚する
いつから彼女を好きになったのかはこの時は覚えていない
ただ、このかわいい人と一緒にいられることをラッキーだと
噛み締めるんだ
華奢な体、どこにいても分かる声、一生懸命なとこ
俺は大切にしたいとあの時誓ったんだ
―それなのに―
最近ヒナの様子がおかしいと思う
練習が忙しくてなかなか会えずにいたが
メールでもよくスガのことを聞いてくるようになった
最初は食べられないものはあるかとか
苦手な食べ物はないかとか
ヒナのお母さんが取引先とか出張先で大量にお土産を買ってきてくれるから
おすそ分けのためだと思ってた
実際そういっていたのもあるが
練習での様子とか、そういうことも聞かれ始めて
俺の中で何かもやもやとした感情が芽生える
練習が終わり部室の階段に差し掛かるとヒナが小さな鏡で前髪を整えてる姿がみえる
急いで駆け寄ろうと思ったら隣にスガがいる
何かを少し話した後すぐ離れていったが何を話していたのか
すごく気になる
眺めてると急いで携帯を取り出し素早く何かを入力して小さくガッツポーズをしていた
気にしちゃダメだとわかっているのに
なんだ、この気持ちは
「お待たせーヒナ」
後ろから声をかけるとヒナが振り向く
いつもの笑顔で
「お疲れ様ー!旭!」
なんか胸の奥がチクリと痛んだ気がした。