第3章 Kissから始めよう
今までの人生
恋愛なんかでこんなに悩んだことない
今まで付き合った子は向こうから告白してきた子ばっかりで
選択権はいつも俺にあって
可愛いけりゃ、それでオッケー
だから、飽きたらこっちからバイバイだったし
たまにはあっちからバイバイされることもあったけど、それも二日後にはどうでもよくなってたし
…まぁ、前の彼女のことはちょっとだけ引きずったけどさ…
それは、未練というより、なんで俺よりあの男なんだ!?っていう、悔しさの方が勝ってたし…
だから
なんで今
櫻井とのキスにこんなにこだわってるんだろうって
自分で自分がわかんない
なんであいつとのキスだけ、こんなに何度も思い出すんだろう?
なんであいつの泣きそうな顔を思い出すだけで、胸が痛くなるんだろう?
なんで…?
なぁ…
教えてくれよ、櫻井…
「…はよー…」
櫻井のことばっか考えてたら、よく眠れなくて。
寝不足のボーッとした頭を抱えながら、教室のドアを開ける。
「おはよー松本」
「おまえ、今日は一段と寝起き悪いな~」
次々に掛けられる声を無視して教室を見渡すと、どこにもその姿はない。
「…あれ?櫻井は?いねーの?」
まさか…
昨日のことがショックで、寝込んじゃったんじゃないよな!?
「翔ちゃんなら、もうメイドさんの仕度に行ったよ~」
内心焦ってたら、相葉がのんびりした口調で答えてくれた。
「あ…そっか…」
「松潤、翔ちゃんに用あったの?」
「いや、別に…ってか、おまえ松潤って…」
「え?松本って、下の名前潤でしょ?略して松潤っ!」
「馴れ馴れしいな、おい」
そんな仲良くもないはずなのに、いきなりそんな呼ばれ方してちょっとムッとしてたら、ポケットに入ってたスマホがぶるぶると震えた。
取り出してみると、智からの着信で。
「智?なに…」
『じゅーん!今日の文化祭、ニノも行くって言うからさ。例のかわいこちゃん、何時からメイドやってるか教えて!』
俺がなにかを言う前に、向こうから質問が飛んでくる。
「あ?あー、えっとちょっと待って…」
智に言われて、尻ポケットに突っ込んでたくしゃくしゃのタイムテーブルの紙を取り出した瞬間。
「うおーっ!」
教室が、どよめいた。