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イチオクノホシ【気象系BL】

第3章 Kissから始めよう


【潤side】

「はぁぁぁぁ…」

ベッドに転がって、天井をぼんやりと見つめながら。

何度目かわからない溜め息が出た。



『……好きだな、って、そう思った』



「…いやいや、ありえないだろ…」

頭んなかでしつこいくらいにリフレインする櫻井の言葉を、否定してみるけど。

その度に、胸の奥の方がチクチクと痛む。


だって…
今までそんな素振りなかったじゃん…


『まあ、無理かもしれないけどさ…こんなこと言った俺のこと、キモいなんて、思わないでね……』


キモいよ…
キモいに決まってんだろ…

男同士だぞ…?


その瞬間、ズキンと大きな痛みが胸に走った。

「痛って…!」


さっきから、なんなんだよっ!
この痛みはっ!


『忘れてくれていいから…』


あいつ…

今にも泣きそうな顔してたのに

笑ったんだよな…


「…忘れられるわけ…ねぇだろ、バカ…」
「ニャーン」

一人言ちたとき。
小さな鳴き声とともに、『はな』がピョンとベッドの上に登ってきた。

「ニャーン…」

拾った頃よりずいぶん大きくなったキジトラの体を片手で抱き寄せると、また小さく鳴いて。

ペロペロと俺の顔を舐め始める。

「ふふっ…くすぐってーよ、はな」

小さく身をよじったら、はなの熱いくらいの舌が唇を舐めて。

不意に、あいつの唇の感覚を思い出した。


あったかかったな…


一昨日とは違う、ちゃんと意志をもって重ねた唇。


あったかくて、柔らかくて…

気持ちよくて…


本当は

離したくなかった


「…えええっ!?俺、マジか…」

たどり着いた思考に、思わず声が出ると。

また、はなが唇を舐めた。

「ちょぉっ…はな、やめろって…!」

何度も何度もしつこいくらいに舐めるから。

力を入れて引き剥がすと、小さく鳴いて、ベッドから降りてしまった。

ふいっと背中を向けて、少しだけ開けていたドアからはなが出ていくのを目で追いながら。

また櫻井のことを思い出す。


『明日からの文化祭、頑張ろうな!』
『バイバイ』


ひきつった笑顔で、そう言って。

振り向きもしないで去っていった背中を。


「…櫻井…」


また、胸の奥の方がぎゅぅっと痛くなった。



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