第3章 Kissから始めよう
なのに。
俺を軽く突き飛ばして、大慌てで後退りした松本は、
「は、はあ〜??な、なに言っちゃってんの?…わけ、分かんないんですけど?」
「松本…」
「お前、男だろ?言っとくけど、お、俺だって、男だぞ!」
「知ってるよ」
「じゃあ、な、何で、す、す、すき、とか、い、言ってんだよ!」
はあぁ〜……(-.-)
『好き』に気付いた途端に玉砕か…
まあ、それも仕方ないか
当たり前だよな。
俺たちは男同士。
好きとか、キスとか、
そんなの世間的にも常識的にもどうかしてるよな……
俺って、実はどうかしてるんだと分かってしまった。
だから、女の子に『好き』だと……そう言われても、心に響かなかったのか?
俺は生まれつき、男しか好きだと思えない体質だったのかな…?
………分からない、そんなの。
分からない……
けど………
初めて感じたこの気持ち、前向きに受け止めて、しっかりと砕け散って、
そして、ちゃんと昇華させてやりたい…
「…さ、櫻井、お、おまえ…」
「松本。急にこんなこと言ってごめんな…実は、俺も少し混乱してる」
「少し…かよ…お、俺はものすごく…!」
そうだよな…
男から、『好きだ』何て言われても、気持ち悪いだけだよな…
普通はそうだろうから。
お前は何も悪くない…
だけど、今だけ……
ほんの一瞬でいいから、
俺の気持ちに……
「松本……」
「な、なんだよ」
真っ直ぐな眼差しに、何でだろ?
泣きそうになる…
こんなとこで、告白して泣くって、
それだけは避けたいから。
俺は腹にグッと力を入れた。