• テキストサイズ

イチオクノホシ【気象系BL】

第1章 協奏曲 ─concerto─




フロアの時計の針は17時を指している。


もう直ぐ終業の時間だ…

来週に回してもいい仕事は、もう手を付けなかった。
俺にしては珍しく、デスクの上を片付け始めて、
『私、定時で上がりますから』オーラを出しまくった。

その作戦が功を奏してか、新しく問題を持ち込むやつもいない。

厄介な相談に来るやつもいない。

『よしっ!!』

心の中で気合を入れて立ち上がり、

「今日はこれで上がるから。」
宣言してバックを持った。


廊下に出ると、丁度俺を迎えに来た智くんと鉢合わせた。

「おっと、グッタイミン!」
「ちゃんと上がれたんだね~」
「俺がその気になればちょろいもんよ♪
さあ、行こうか?」

「翔ちゃん、あれは?」

あれ??

智くんが言う『あれ』が分かんなくてキョトンとする俺に、

「ほら、昼間、営業のマドンナから、デレデレしながら貰ってた紙袋…」
「あ、いっけね!」

急いで取りに戻ると、それはデスクの端にきちんと置いてあった。

忘れて帰るところだった~!それはいくら何でも失礼だよな…

袋を持って何気に彼女の方を見ると、浜辺さんも俺の方を見ていた。

俺は、忘れて帰ろうとした罪悪感もあって、とびっきりの笑顔で、その紙袋を上げてみせた。

彼女は、安心したようににっこり笑って軽く小首を傾げた。



「……ああいうの、どうかと思うけどね~…」

その数秒のやり取りを見ていた智くんが、面白くなさそうにぼそりと言った。

なんだよ~、自分が忘れてるって教えてくれたくせにさ。


「ありがとね~、教えてもらって。後で一緒に食べようか~」

「…いらない…翔ちゃんがもらったんだし…
翔ちゃんに食べて欲しいんでしょ!」


……なんだよ~、忘れてるってちゃんと教えてくれといて、結局ヤキモチじゃん…

まあ、いつものことだけど…


/ 117ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp