第3章 Kissから始めよう
脚立ごとひっくり返った俺を受け止めてくれたのは、松本で。
俺はその胸に受け止められて…
そして……
不思議な感覚に目を開けると、
目の前には密集した無駄に長い睫毛と濃い眉…
それと、柔らかくて熱い……
「わあああああぁっ//////」
慌てて俺を突き飛ばした松本は、しりもちをついて後ろに両手をついた。
……あ~あ、キスしちゃった…
まあ、不可抗力だけど…
松本の唇、すげ~温っかかったな…
「ごめん…怪我なかった?」
俺はズボンを払いながら立ち上がった。
脚立の上から落ちた割には、たいして痛くない。
松本がクッションになってくれたからだな~
ということは……
「立てる?」
手を差し出したのに、松本は固まったまま目を見開いて俺を見ている。
俺は手を伸ばしたままその強い眼力を受け止めた。
……怒ってるのか〜(^^;)))
仕方なく、後ろに着かれたままの腕を掴んで、強引に引っ張った。
「ほらっ、立てる?」
「あっ、う、うん」
慌てて俺の手を振り払った松本は、ズボンをパタパタと大きな音をたてて払った。
そんなに、嫌われてんのか…俺…
「あ〜あ、絵の具こぼれちゃった〜。これ、落ちるかなぁ〜?」
そう言えば何で帰ってきたの?忘れ物?」
「………」
「でも、机、もう廊下に積んちゃったからな〜松本の机探すのは至難の技…」
えっ??
怖い顔して黙っていた松本が、急に俺の腕に掴みかかってきた。
「…………」
「………な、なんだよ?」
「あ、ごめ!!な、何でもない!!
…俺、帰るわ!」
松本は、大慌てで走って教室を出ていってしまった。
「なんだよ、あいつ……忘れ物、いいのかな?」