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イチオクノホシ【気象系BL】

第3章 Kissから始めよう


なぜか、学校まで全速力でチャリを漕いでしまった。

「はぁっ…はぁっ…」

上がった息を整えつつ、校舎を見上げると。

三階の教室の灯りは、まだ点いている。

そのことになぜかホッとしつつ、校舎へと入った。

もう大半のクラスは解散したのか、時々どこからか微かな話し声が聞こえるだけの学校は、いつもと違って見えて。

鼓動がほんの少しだけ早くなるのを、感じる。


なんか…

勢いだけで来ちゃったけど…

櫻井が残ってるとは限らないよな…?

他の奴だったら…
どうしようか?


そんなことを考えながら、教室のドアを開くと。

中にいた人影が、ビクッと震えたのが目に飛び込んできた。

「え…松本…?」

教室には、櫻井の姿しかなくて。

脚立の天辺に座り、俺を振り向いた状態で、これ以上ないってくらいそのくりくりの瞳を大きく見開いていて。


きゅん、っと。

からだの奥でなんかの音が聞こえた。


…なんだ…?


「なに?なんか、忘れ物?」

右手に赤色の絵の具の付いた筆を持って俺を見つめてる櫻井の唇は、確かに智のいう通りぷるっぷるで。

視線が、自然にそこへ吸い寄せられてしまう。


…いや、待て…

あいつは櫻井だぞ…?

真面目でお堅い、クラス委員くんだぞ…?

可愛い女の子じゃないんだぞ!?


そう自分で自分に言い聞かせても、目が離せなくて。

「松本?どうしたんだよ?寝ぼけてんのか?」

櫻井が、不思議そうに首をかしげながら立ち上がろうとした。

「え…」

その瞬間、ぐらりと脚立が揺れて。

「あぶないっ…!」
「う、わぁっ…!」


駆け出したのは、条件反射みたいなもんで。


“ガタガターンッ”


激しい衝撃が、全身を襲って。

反射的に目を閉じたら、なにかが倒れる派手な音が耳に飛び込んできて。


直後に
唇に触れた


温かくて柔らかいモノ


「…っ!?」

びっくりして目を開いたら、超至近距離に、あのくりくりの瞳が…。




これって…

もしかして……



キス


しちゃってる………?




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