第2章 不言色 ―いわぬいろ―
窓から差し込む日差しの温かさと、電車の規則的な振動に揺られているうちに、俺はいつの間にか眠ってしまったらしく…
気が付いたらガッツリ雅紀の肩に持たれていて…
目を覚ますと前に座っていた女子高生らしき3人組が、俺たちを見てヒソヒソ、クスクスやっていた。
急に恥ずかしくなって、慌てて雅紀から離れて座り直した。
「起きたんだ?」
「ん…ごめん…重かったよね…?」
「ぜ~んぜん!ニノの重さなら、もっと重くても平気だよ~…だって俺の上に跨って来るじゃん♡」
最後のは耳打ち。
一気に顔から火が出た。
こんなとこで言う話じゃない!!って、怒りたかったけど、どうも前にいる3人の視線が気になって…
……どう思ってるんだろう?俺たちの事。
やっぱり、ゲイカップルに…見えてるのかな?
乗り継いで、やって来たのは『江ノ島駅』
改札を出ると、もう潮の香りが鼻を擽った。
「わあ~、気持ちイイ!最高の海日和じゃん!」
海日和って…何で海?
眩しくて目を細める俺の手を、雅紀は握って走り出す。
「あ、ちょっ///」
俺たちふたりを見て、さっきの女子高生たちが揃って『キャッ♡』と声を上げた。
「…雅紀、手、離して…」
走りながらそう言うと、雅紀はもっと強く俺の手を握った。
仕方ないから、俺もそのままにして、雅紀に手を引かれ乍ら歩いた。
「わああぁ~、眩しいな~!マジで気持ちいい!…ね!?」
「…うん…」
海よりも…
雅紀の笑顔の方が、俺には何十倍も眩しかった。
「…座ろっか?」
「…うん」
しばらく歩いて、少し人気が途絶えた砂浜に、二人で並んで腰を下ろした。