第2章 不言色 ―いわぬいろ―
「………」
「……」
頬を撫でる爽やかな海風に、
走ったせいで上がっていた息が、落ち着いてきた。
「良かったね!来て♪」
「だね~…気持ちいい…だけどさ。何で海に来たの?」
「え~??いや、恋人同士のデートっていったら、海かな?って思ったんだ…」
ふふふ…雅紀らしい…
「でもさ…さっきみたいのはさ…」
「さっきって?」
「だからぁ~…人前で、その…手、繋いだり、さ…」
「いいじゃん!俺、みんなに自慢したいくらいだもん!俺の恋人、可愛いでしょ!羨ましいだろ~、ってさ」
「…なに…それ…」
恋人、何て、サラッと言うと…テレるじゃん…
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
雅紀は砂の上に投げ出された俺の手を握ってきた。
「ニノ…大好きだよ…」
「…うん…俺も…」
「さっき言ってた…ニノの恋人、だった人~?」
「…あ、うん…」
「どんな人なのか分かんないけど、絶対、俺、いつかは…いつになるか分かんないけど…
ニノの中から、その人のこと、追い出してやるから!」
……まさき…
握った手に力がこもる…
「なんてさ…ホントは自信ないけどね~
でも、いいんだ!ニノが、その人の事、ホントに忘れられるまで…その人を好きなままのニノを、俺が包むから…」
「雅紀…」
「ああ~!なんか、カッコつけ過ぎちゃったかな~」
頭を搔く雅紀の頬に、首を伸ばして唇を押し付けた。
「ニノ…」
「雅紀…」
見つめ合った雅紀のキラキラした瞳に、心が凪いでいく…
「…きれい…」
「え?お、俺っ??」
「うんん、うーみ!」
「ちょお~と~!!」
「もう一回走るよ!よーい、スタート!」
駆けだした俺に後から、笑いながら追いかけてくる雅紀…
ナイスチョイスだよ…海…
ありがとね…雅紀…
大好き、だよ……
【 END 】