第2章 不言色 ―いわぬいろ―
「…ノ……ニノ…」
優しく髪を梳きながら、俺を呼ぶ声に、
ゆっくりと目蓋を押し上げると、そこには…
「大丈夫?ごめんね…優しく出来なくって…」
「……まさ、き…」
喘ぎ過ぎたのかな?
…掠れた声で呼んだのは、別の人の名前だった…
あの人じゃない……
ずっと側にあった、あの人の名前じゃない…
「俺もう、夢中になっちゃって…最後全然余裕なくなっちゃって…これじゃあ~、プロ、失格だょ…」
「…まさき、ギュウってして!」
溢れ出た涙を隠すために、彼の首を引き寄せてしがみ付いた。
………翔じゃなくても…俺…おれ…
スンッ…
こっそり鼻をすすったけど、
きっと雅紀は気付いてる…
俺が、泣いてること…
でも、何も言わないで…優しく、黙って頭を撫でてくれる…
その大きな、安心の中…俺はもう一度鼻をすすった。
何度も貫かれたソコには、まだそのままの存在感のまさき、が…
気が遠退いたのは、一瞬だったんだ…
………
ソコをキュッと締めると、雅紀は俺の顔を覗き込んで、目を丸くした。
「ニノ…」
「…もう一回、シたい?」
「うん…あ、いや…そんな」
「俺はいいよ…」
被せ気味にそいう言ってやると、雅紀はまた驚いたような顔をした。
「えっと、や…でも」
「だって、まだ全然いけるじゃん…これ♡」
締めつけると、雅紀の眉間にしわが寄る。
その顔が、堪らなく愛しくて……
そんな気持ちになってる自分が、不思議で…
「…俺、もう一回、イキたいんだけど?」
俺の言葉に、雅紀の表情がまたビックリ顔になる…
色んな『顔』、持ってるんだな~、この人。
「…きて♡」
両腕を突き出してやると、雅紀は
『じゃ、ホントにいくよ?』と、俺を抱き締めた。
…………さよなら……翔…
温かい胸に抱かれて、俺は静かに目を閉じた。