第2章 不言色 ―いわぬいろ―
【ニノside】
雅紀に追い詰められて上り詰めて…
一瞬で頭ん中が真っ白になって。
快感の波のその向こうに、浮かんだのは……
『カズ…あいしてる』
『カズ…大好きだよ…』
ぼんやりと……
あの人の顔が浮かんで来そうになった、その瞬間、
「ニノ……」
俺のことを呼び戻してくれたのは……
「まさき…」
目の前で、優しい笑顔を向けていたのは、雅紀だった。
力強い腕に引き寄せされて、
温っかい胸の中に抱き留められて、
浮かびかけた顔はスーッと遠くへいった気がした。
あああ………
俺、翔じゃなくても、
大丈夫なんだ…
『雅紀と一緒に、気持ち良くなりたい』
自分の口から零れ落ちた言葉に、自分で驚いた。
そして、嬉しかった…
雅紀にとって俺は、数多いるたくさんの中のひとりかもしれない…
そう思ってしまうことが、
こんなに胸を苦しくさせるなんて…
今この瞬間、彼の瞳に映っているのは俺だけ…
キラキラと雅紀の心そのもののような瞳に……
『この中に俺だけを写して欲しい』
そんな願望が生まれてきて。
翔じゃない、この人に…
俺は……俺の……
『まさきっ…も、ほしいっ…』
身体の熱と、沸き上がってくる目の前の人への慕情に、今は身を任せてしまいたい…
この後にどうなるのかなんて…
そんなの分かんないけど。
「…あぁ…まさき…気持ち、いい…」
なにも考えられない…
俺の中で、俺を熱くするその刺激に…
気が遠くなりそうな甘い囁きに…
「…ねえ…もう、きて…」
我慢できない迸る情欲に、
俺は抗わずに、脚を開いた。
無防備なその姿は、
きっと俺の心の中と同じだろう…