第1章 協奏曲 ─concerto─
【翔side】
「翔ちゃ〜ん、この間頼んでおいたやつ、どうなった〜?」
……ここにもいた(-_-;)
職場なのに俺のとこを『ちゃん』付けで呼ぶやつ…
「あ〜、部長、それで進めて良いって言ってたよ。」
「あっそ。よかった〜!じゃ、それで発注かけちゃうよ。」
「おう。よろしく頼むよ…つ〜かさ。お前が自分で聞けよ〜」
「え~、だってあの人ちょっと苦手なんだよね…」
そう言いながら笑う雅紀は俺の同期。
一見人懐っこそうに見えるこいつも、実は人見知りで気遣いの人だから…
まあ、ちょっと取っ付きずらい人がいるんだろうけど…
仕事だからね…ちゃんとその辺…
「ところで。今夜さ、どこ行くの?」
「はっ??」
「大ちゃんと♡」
不意に耳元に唇を寄せ、そう言ってきた雅紀。
「何で、それ…」
「さっきトイレで大ちゃんと会ってさ、今夜翔ちゃんのサプライズで、いいとこ行くって♪」
…あいつめ~…
「怒んないでやってよ~。一周年なんだってね♪
大ちゃん凄く嬉しそうだったよ~」
そんなことまで…
「そっか~…もう一年になるんだね~。早いなあ。」
「…まあ、うん…」
俺たち3人は同期入社で、本社にいる面子の中ではずっと仲良くしてきたし。
つき合う前から、いろいろお世話にもなってるし…
「…いろいろ、ありがとな…」
なんだか気恥ずかしさもあって、もごもごと言う俺に、
「明日休みだしさ♪まあ、腰抜けない程度に楽しんでよ♡」
「おまっ///」
ヤバい!朝から顔が熱くなる。
変に思われるじゃんか///
「どうだったか、また聞かせてね~。
じゃ、部長の件、ありがとね~」
雅紀はそうにっこりし、手をひらひらと振って行ってしまった。