第2章 不言色 ―いわぬいろ―
「また…会えるかな?」
真っ直ぐに俺を見つめる瞳が、あんまり綺麗で…
なんだか泣きそうになる。
「…うん…じゃ、また電話す…」
「今夜は?」
「えっ?」
「あ、いや、俺9時には終わるから…よかったら!」
「……」
「予定あるなら、全然…また今度で…」
「…会いたい…今夜」
ああ、顔が熱くなる…
何で俺こんな…?
「やったぁぁ!!バイト頑張っちゃうよ!俺」
なんか…やっぱりこの人、素直で…可愛い。
人が行き交う舗道なのに、全身で喜びを表現する相葉さんに、俺も自然と笑顔になれた。
ホントは、『Luce』に行く前から、もしかしたらそんな約束できないかな~…なんて…
そう思ってたんだ。
エッチしたいかどうか…
そんなの分かんない。
この間、あんなだったんだから、
直ぐに『さあ、ヤリましょう』ってなれるかどうかも、正直自信ない…
でも…
この人と一緒にいたい。
ババ抜きしたっていい、って。
相葉さんそう言ってたし…
お酒飲んで、他愛もない事を話したっていい…
彼とならきっと、優しい時間が過ごせるだろう。
……翔のことを忘れた訳じゃない。
仕事が忙しい時も、心の奥にはいつもあった…
でも。
前に進みたいんだ。
相葉さんなら…
俺を連れ出してくれるかもしれない…
そんな気がしてるから。
「じゃあ、9時半には行けると思う!この間のところでいいの?」
「うん…じゃ、部屋番号、メッセージに入れとくよ」
「分かった!今夜はLINE、交換しようね!」
「ふふふ…そだね…」
じゃ~ね、じゃ~またね!!
何度も振り返って、
何度も手を振って、
「まったく…ハズいから…」
会社への道を急ぐ俺は、
気持ち悪いけど、ひとりで笑ってた。