第2章 不言色 ―いわぬいろ―
それから数日は仕事が忙しくて、それどころじゃなかったから、思考の迷路に迷い込むことも無かった。
そして、あの夜から2週間が過ぎていた。
「そう言えば…この辺だったかな?」
『Luce』の場所を検索していた俺は、
丁度外回りで近くに来ていた。
相葉さん…いるかな?
……まあ、いなくても別にランチ食べて帰ればいいし。
ドキドキしながら店のドアを開けると、
「いらっしゃいませぇ~」
……相葉さんじゃない…
そんなに大きな店じゃないから、従業員もそんなにいるわけじゃない。
まさか、ピザ…焼いてる訳ないよな…?
「待ち合わせですか?」
「あ、いえ、違います!」
窓際の席に通されてメニューを眺めながら、
俺は相葉さんに会えなかったことを予想以上にガッカリしている自分に驚いていた。
ランチのパスタはリーズナブルの割りに美味しかった。
相葉さんはいないし、もう会社に戻らないといけないし。
俺はチェックの時、思い切って相葉さんのことを聞いてみた。すると、
「ああ、雅紀ならもう少ししたら来ますよ。待ってますか?」
「ああ、いいです…」
もう席を立ってしまったし、時間も時間だし。
今日は縁がなかったんだって、そう思って店を後にした。
「ちぇっ…せっかく来てやったのにさ…」
そう言いながら歩き出した俺の耳に、
「ニノ~!!」
振り返ると、相葉さんが全力で走って来るのが見えた。
「ちょっと…なんだよ、あれ…恥ずかしいじゃん」
そんな言葉とは裏腹に、俺の心拍数は一気に上がった。
「ニノ!!来るなら言ってくれれば~
はあ、はあ…でも良かった~会えて!ずっと待ってたんだよ~、店でも…夜の方でも…どっちでもいいから、会いたいな!って」
「…ごめん…」
…なんで誤った?俺…
でも……
俺だってうれしかった。
息を切らして追いかけてきてくれたことも。
待ってた、って言ってくれたことも。