第2章 不言色 ―いわぬいろ―
俺の視線に気づいた相葉さんは、慌ててバスタオルをとって腰に巻き付けた。
「ごめん、ごめん!これは単なる生理現象だから!気にしな…」
「なんだ…残念…」
「えっ??」
「俺でそうなったのかと思ったのにな…」
なんでだろ…
夕べのことは夢じゃないのに…
こんな軽口叩けるのは…
「あ、いや!俺はさ、もちろんニノが…」
「………」
絡み合う視線……
少し困ったように揺れる瞳…
謝らなきゃ……
呼んだのは俺なのに…
「…相葉さん…夕べは、ごめ…」
「あのさ。俺、バイトあるから帰るけど…」
「…バイト…?」
「うん!…そうだ!よかったら来てよ」
そう言って急いでリュックをあさり、取り出した名刺サイズの紙を俺にくれた。
「これ、店の…ランチもやってるからさ!」
ランチ……
『Luce』
「…ルーチェ…」
「気軽に入れるイタリアンだから!
良かったらおいで」
優しい彼の微笑みに、なんだか胸が苦しくなって唇を噛んだ。
「そんな顔しないの!
最初に言ったでしょ?エッチありなの?って」
ああ…そう言えば、確認されたっけ。
「そういうことしなくてもさ、誰かと話したいな、とかそういうので全然いいから!一緒にババ抜きする、とか?
そんなのでもいいから、また呼んでよ!」
「…ババ抜き、って…」
「そ!心の隙間埋めてあげるのが
俺の役目だから」
でた!喪黒福造!
「ほら。それそれ!そうやって笑ってて欲しいのよ、ニノにはさ♪」
相葉、さん……
純粋に、また会いたい…そう思えた。
あんなふうに終わってしまったけど。
相葉さんの腕の中で眠りに落ちる瞬間、
不思議な気持ちだったんだ。
ああ、俺、
この人のこと、好きかも…って。
それは、翔に抱いていた燃えるような思いとは全然違って…
淡くて、優しくて、穏やかで温かな…
上手く言えないけどね。