第1章 協奏曲 ─concerto─
『外回り行くから、昼はいない』
「あー、もうっ…ニノのせいだっ!」
翔ちゃんからのメッセージを見て。
思わず、深い溜め息が出た。
完全にへそ曲げちゃってるじゃ~んっ!
「…今日の夜は、お仕置きかな…」
帰ったら、どんな変態プレイさせられんだろう…なんて、重い気分を抱えつつ。
仕方ないから、一人で最上階の社食へ向かった。
ニノの野郎…
俺たちを引っ掻き回しといて
自分はさっさと相葉ちゃんとラブラブランチに行きやがって…!
ちゃんと翔ちゃんの誤解を解いてからにしろっての!
鬼!悪魔!
心のなかで盛大に文句を言いつつ、いつものAランチを頼んで。
トレイを持ったまま、空いてる席を探す。
いつもより少し遅くなったからか、すごく混んでて。
しばらくウロウロしてると、目の前の席が運良く空いた。
「ラッキー♪」
急いで、その席にトレーを置いて。
椅子に腰掛け、何気なく顔を上げると。
正面に座っていた人と、目が合った。
「あ…」
「こんにちは、大野さん」
翔ちゃんとこの、マドンナさん…
「…どうも」
なんとなく気まずくて、ちょこんと頭を下げておざなりの挨拶をしちゃったら。
浜辺さんは、それを気にした風もなく、にっこりと可愛らしく笑う。
…可愛い、よなぁ…
俺は元々男にしか興味ないけど
そんな俺でも純粋に可愛いと思う
だから、元々ノーマルの翔ちゃんが
くらっときてもおかしくないわけで…
翔ちゃん
この子のプレゼント、どんな気持ちでもらったんだろ…
ぼんやりと彼女の顔を見ながら、今日のメインのカキフライを口に放り込んだ。
彼女はスパゲッティをフォークに巻き付けながら、俺に笑顔を向ける。
「…パウンドケーキ、どうでしたか?少し甘過ぎたかなって思ってたんですけど」
「そんなことないよ?甘さ、ちょうど良かったし。美味しかった!」
さらりと放たれた彼女からの質問に、何気なく答えて。
………ん?
「…え…?ええっ!?なんで、俺が食べたって知ってんの!?」
びっくりして訊ねたら。
浜辺さんは、一瞬だけ目を真ん丸にして。
すぐに、くすくすと面白そうに笑った。
「そりゃあ、わかりますよ。お二人を見てたら」