第1章 協奏曲 ─concerto─
【智side】
「ふぁ…」
「…顎、外れますよ。週末、なにやってたんですか?」
月曜日。
出社早々、大あくびをかました俺に、隣の席のニノが冷たい視線を投げた。
「なにって、別に?普通にしてただけだけど?」
「相葉さんに聞きました。なんか、一周年サプライズがあったんでしょ?」
「え…」
あいつ~~~!
ペラペラしゃべりやがって!!
「んで?なにやったんです?ま、どうせ寝不足になるほど、ヤりまくったんでしょうけど」
「…ちがわい」
「へぇ~」
じろっと睨んでやると。
ニノはぐっと顔を近付けてきて。
俺のうなじをトントンと指でつつきながら、耳元に唇を寄せた。
「ここ、付いてますよ?キスマーク」
「うぇぇっ!?」
「ほんっと、独占欲強いですよねぇ~。襟んとこギリギリなんで、気を付けないとみんなに見られますよ?」
「マジか!」
いつ付けられたんだ!?
あの時かな…?
それとも、あの時…?
「…っていうか、そんなに思い当たることがあるんですね?」
「え?あ、まぁな…」
「お盛んですこと…」
「うるさいな…。そういうおまえだって、相葉ちゃんとあーんなことやこーんなことやったんだろ!知ってっぞ!?」
「あーんなことって、どんなことです?言ってみてください」
「う…」
「ほらほら。どんなことですか?」
俺の発言がはったりだって、あっさり見抜かれて。
肩をぐっと引き寄せられて、キスでもしそうなくらいの距離で、ニノが面白そうにニタリと笑う。
「う…そ、それは…」
「ほらほら。言ってごらんなさい?」
「…あのさ。お取り込み中悪いんだけど」
蛇に追い詰められたウサギになった気分で、しどろもどろに返してると。
突然、後ろからいやってほど聞き慣れた声が聞こえてきた。
「しょ、翔ちゃんっ…!?」
慌てて振り向いたら、これ以上ないってくらい不機嫌な翔ちゃんの姿。
「あ、あのっ、これはその、違くてっ…」
「これ、審査通しておいていただけますか?」
言い訳しようとした俺のオデコを、手に持ってた書類でバシッと叩いて。
周りのもの全部凍らせそうな、氷点下の瞳で俺を見下ろすと。
翔ちゃんは撫でた肩をおもいっきり怒らせて、踵を返した。
「あらら…御愁傷様(笑)」
さいっっっあくっっ!!