第1章 協奏曲 ─concerto─
全く…ガキじゃないんだから~
夕べあんなに愛を確かめ合ったじゃん!
↑自分で思ってテレる…
まあね…分かってはいても…ってやつでしょ?
そんなら…
「智くん、ヤキモチ♪」
「はあ~?違うし!俺はただホントのことを…」
「じゃあ、食べられるよね?」
「えっ??」
「たかが、パウンドケーキ一個くらい…ヤキモチ妬いてるから、彼女の焼いたものは食べたくないって、そう言うんなら、無理に食べろとは言えないけどさ…」
……
「別にぃ~、食べれるよ、全然!
何とも思ってないし」
「はい、どうぞ♪」
「……」
してやったりの俺と、苦虫を噛み潰したような智くん。
浜辺さん手作りのパウンドケーキは、ナッツやドライフルーツがいっぱいで、しっとりと甘くて美味しかった。
「美味しいね~」
「…まあ、普通じゃん…」
………
「…な、なんだよ…」
「いや。智くん、可愛いな♡と思って♪」
「……」
ヤキモチ妬いて渋々食べた手作りのお菓子が、思いの外美味しかったからかな~?
バツが悪そうに、残りを一気に口に詰め込んだ智くんは、
「俺、洗濯しちゃおっかな~」
と席を立った。
俺がどんなにあなたのこと好きか…
分かってんのかな?
分かってるだろうけど、それよりもっとだよ…
彼女が、本当はどんな気持ちでお菓子を焼いてくれたのか分かんないけどさ。
智くんが言うような気持ちが、少しでもあったとしてもね…
ごめんなさいだけど、1㎜も浜辺さんが入り込む隙間なんかないから…
まあ、小っ恥ずかしいから、言わないけどね…
残りのカフェオレを飲み干した俺の耳に、耳慣れた彼のハイトーンな鼻歌が流れてきた。