第1章 協奏曲 ─concerto─
「ちょっと待ってて」
握りしめた俺の左手の甲に、キスをして。
翔ちゃんがベッドを降りる。
歩く度に、形のいいぷりっと引き締まったお尻が揺れて。
それが可愛いなぁ、なんて思いながらベッドの上から眺めてると、翔ちゃんは持ってきた鞄をガサガサと漁り、透明なボトルと小さな箱を取り出して、ベッドへ戻ってきた。
「あれ?新品買ったの?」
透明なボトルにはまだ封がしてあって。
家にあったのは、まだ半分以上残ってたのにな…って不思議に思ったら。
「まぁ…せっかくの記念日だし?なんとなく、新しいの用意しよっかな…ってさ」
なにげに、らしい言葉が返ってきた。
…そういうとこも、好き♡
今日のこと、すっごく考えてくれてたってことだもんね!
「うん。ありがと。…あ、待って!」
ボトルを枕の横に置いて。
箱のパッケージを開けようとするのを、慌てて止める。
「ん?なに?」
「今日は…ゴム、いらない。生がいい」
「えっ!?」
仕事中から(←おい!)ずっと考えてたことを口にすると、翔ちゃんは目を真ん丸にした。
「いや、でも、さ…」
「大丈夫だよ。腹壊しても、明日休みだし」
「でも…」
翔ちゃんが躊躇するのも、わかる。
初めてエッチした日。
翔ちゃんは事前にいろいろ勉強してくれてたみたいなんだけど、盛り上がっちゃったらゴム着けること忘れちゃったみたいで。
思いっきり中出しされて、お腹壊して。
翌日、会社を休む羽目になった。
あの時は翔ちゃんも会社休んでくれて。
甲斐甲斐しく…世話をするつもりが、お粥作ろうとして鍋焦がしたり、お水こぼして床びちょびちょにしたり…
腹痛が治まってから、片付け大変だったよな…
その次の日に会社行ったら、相葉ちゃんにからかわれて、翔ちゃん怒っちゃったり…
でも、そんなのも
全部大切な想い出
翔ちゃんとの想い出は
些細なことでも絶対忘れられない
大切な宝物だもん
「今日は…翔ちゃんを直に感じたいの」
俺のお願いに、翔ちゃんはちょっとだけ眉を下げて。
でも、ゴムの箱をベッドの下に落としてくれた。