第3章 Kissから始めよう
「おーい、櫻井。帰ろうぜ~」
「え、あ…うん」
ホームルームが終わり。
鞄を掴んで櫻井の席へと駆け寄ると。
櫻井はちょっと恥ずかしそうに、俯きがちに頷いた。
「最近、翔ちゃんと松潤仲良しだよねぇ?ちょっと前までは水と油みたいだったのに…急にどうしたの?」
隣の席の相葉が、不思議そうに首をかしげる。
「え、あ…」
「そりゃあ…俺たち付き合ってるし?」
「「えっ!?」」
「うっそ~ん!じゃあな!」
びっくり顔で硬直した相葉に手を振り。
俺は櫻井の手を引いて教室を出た。
「いいのかよ…」
駅の近くのファーストフード店に入り。
ハンバーガーにかぶりついてると、櫻井が溜め息混じりにぼやいた。
その手には、ハッピーセットのドラえもんのおもちゃが握られてる。
まさかドラえもんが好きだとは…
意外過ぎる…
でもそんなとこも可愛いと思う俺は
相当やられてるな…
「ん?なにが?」
「雅紀にあんなこと言って…」
「ま、本気にはしないんじゃねぇ?ほら、俺生粋の女好きって思われてるし」
「…だといいけど…」
「それよりさ、考えた?初デートの場所」
「あ…」
「早く考えろよ~。明日だぞ?」
「わかってる、けど…」
付き合い出してから2週間。
記念すべき初デートをどこにするか散々悩んだけど、なんせ男と付き合うのは初めてなもんだから、どこに連れていったら喜ぶのか見当もつかなくて。
でも、櫻井にとっては人生初デートなんたから、記念に残るようなところにしたい。
そう考えた俺が出した答えは、櫻井に決めてもらうこと、だった。
だけど。
「別に、どこでもいいよ。なんなら、出掛けなくてもいいし」
「それじゃダメなんだよ!記念すべき初デートだぞ!?」
案外ドライなのか。
はたまた見かけによらずめんどくさがりなのか。
櫻井には初デートってワードは、あんまり響かないようで。
どうすんだよ~!
「どこでもいいんだよ。水族館とか遊園地とか!」
「う~ん…」
「映画とかは!?」
「…じゃあ、さ」
「おう」
「…松本の家に、行きたい」
「………へ?」