第3章 Kissから始めよう
すると松本は、一度ゆっくりと息を吐き出してから振り返った。
「あのさ。お前、何て言うつもりだったの?」
ああ…そのことか。
「なんて…って?」
「だから〜!…その…好きな人聞かれてさ、誰を言うつもりだったんだよ?」
「…松本潤だって…」
「バッカじゃないの??あのさ!
いくら世の中、前より寛大になってるっつたって、実際にはそうはいかないんだよ!
『あいつ、変態なんだ〜』って、好奇心いっぱいの…いや、好奇心しかないやらしい目で見られるんだぞ!」
……なんか、すげ〜興奮してるけど…
「ねえ…」
目だけで少し離れた方を指すと、そこには買い物帰りの主婦と子どもが……
松本の剣幕に唖然として固まっている。
「あ………
ちょっと、来いって!」
「ったく(-_-#)みせもんじゃねーっつうの!」
ぶつぶつ言いながら、また俺の手首を掴んで歩きだした松本に、黙って引っ張られている…
……なんかさ。
一人で焦って、
一人で怒って、
面白いやつ……
松本に手を引かれた俺は、商店街の外れにある小さな児童公園にやって来た。
こんな時間じゃ、誰も遊んではいなくて。
こうやって手を引かれて歩くの…何度目かな?
「松本さ…俺の事、変態だって思ってるんだ…」
別に怒ってる訳じゃない。
傷付いた訳でもない。
ただ、聞いてみたいなって思って…
「はあ??そ、そんなこと、思ってる訳ねぇ~じゃん!おまえの事そんな風に思ったとこ、1㎜だってないから!!」
…あ~あ、また怒ってるよ…
「そっか…そんならよかった~」
そう言いながら、公園に一個だけあるベンチに座ると、松本も俺の隣に焦ったように座って来た。
……なんか、忙しいやつ…
そんな松本に、自然に笑顔になった。