第1章 協奏曲 ─concerto─
【智side】
なんか見た目そんな高そうなホテルじゃないからさ
翔ちゃんにしてはしょぼいとこ連れてきたなって思ってたら…
こんなステキなとこだったなんてっ!!
「ありがとーっ!翔ちゃんっ!」
俺は心の内の喜びを表現するために、体当たりする勢いで思いっきり翔ちゃんに抱きついた。
「どぅわっ…」
翔ちゃんはよろけつつも、俺をしっかりと抱き留めてくれて。
「気に入ってくれた?」
「うんっ!もちろんっ!」
「よかった」
嬉しそうに微笑みながら、俺のほっぺたにチュッと触れるだけのキスをくれる。
「あんっ…そこじゃなくてさ…ここ!」
それだけじゃもちろん物足りなくて。
唇を突きだしておねだりすると、今度はちょっと呆れたように薄笑いを浮かべながら。
やっぱり唇の先に触れるだけのキスを落とした。
「翔ちゃん、もっとぉ~」
「後でね。夜はまだ長いんだしさ。後でゆーっくり可愛がってあげる」
「えーっ…」
つまんないの~っ!
って一瞬だけ思ったけど。
まぁ、エッチ始めちゃったら俺、グランピングなんてどーでもよくなっちゃうだろうし。
お楽しみは後に取っといて、今は目の前にあるものを楽しもうっと!
「あっ…翔ちゃん、これっ!」
俺はぐるりと辺りを見渡して。
タープの支柱にぶら下がってる、俺のランタンを見つけた。
最近ハマって見てるキャンプ動画のなかで使われている物で、どうしても欲しくなって衝動買いしちゃったやつだ。
「もしかして、持ってきてくれたの!?」
「うん、ごめん。勝手に持ち出すのもどうかと思ったんだけどさ…」
「全然いいよっ!ありがとっ!」
ちょっと申し訳なさそうに眉を下げるから。
食い気味にそれを遮って。
今度は俺の方からキスをした。