第3章 Kissから始めよう
「櫻井くん…ごめんなさい…後夜祭、終ってるのに…」
「あ、いや…」
「まりかちゃん!謝らんでもええんやで~、こいつがドタキャンしたんが悪いんやから!」
「ドタキャンってわけじゃ…でも、行かなくて、ごめんね…」
「………」
まりかちゃんがじっと俺を見ている。
……そうだな…確かに、よく見るとすごく可愛いかも…
「まりかちゃん…よく、図書館で会ったよね~?」
「え!?覚えてくれてたの?」
「うん…よく会ったから…」
「嬉しい!櫻井くん、いつも勉強してるから、私になんか気付いてないって思ってた…」
「そんなことないよ…可愛い子がいるな…って思ってたからね」
「櫻井くん!!」
「んん゛ん゛んっ///」
「どうしたの?潤、風邪?」
斗真が松本の顔を覗き込んでいる。
「まりかちゃん。こんな野次馬連れてきてごめんな~」
「そんなこと…村上くん…ありがとね」
「まりかちゃん…」
見惚れている村上はほっといて…
えっと…どうしたら…?
「あの…櫻井くん…」
「……」
「もう分かってると思うけどね…私…私ね…」
「…うん…」
伏せていた彼女の大きな目が、ゆっくりと俺に止まった。
「…櫻井くん…好きです…ずっと前から…
もしよかったら、付き合ってください…」
「…」
「……」
「………」
まりかちゃんの完璧な告白に、ギャラリーが息を飲むのが分かった。
そこにいるはずの松本は…
いったいどんな顔をしてるんだろう?
……どんな顔もしてないか…
俺が誰と付き合ったとしても、関係ないもんな…
そう思うと、胸の奥がズキンッと鈍く痛んだ。