第3章 Kissから始めよう
「おはよー…ってなに?どうしたの、潤。顔、スゲー浮腫んでるけど?もしかして、寝不足!?」
櫻井のこと考えてたら、全然寝られなくて。
寝不足の身体を引き摺るように学校へいくと、斗真に指差して笑われた。
「うるせーな…」
「なになに!?もしかして、彼女と朝まで…とか!?」
揶揄う言葉に、思わず教室を見渡すと。
窓際の席に座り、こっちには背を向けて窓の外を眺めている櫻井を見つけて。
サーっと頭から血が落ちていく感覚が、した。
「ちげーわっ!」
「うわっ…なんだよ、急にっ…」
「俺は今、フリーなんだっ!フリー!わかったか!」
「わ、わかった!わかったからっ…」
斗真の首根っこを掴んで、ぶんぶん振り回しながらまた櫻井を見ると、一瞬だけ俺のことを見て。
でもすぐに、ふいっと顔を背けてしまう。
『俺も頑張っておまえのこと忘れるから』
頭んなかで、あの時の櫻井の台詞がまた聞こえてきて。
一晩中俺を悩ませた痛みが、また蘇ってきた。
なんなんだよ、これっ…
「じゅ、潤っ…苦しいっ…ギブギブっ…!」
「おーいっ、翔くん!なんで後夜祭来なかったん!?」
無意識に斗真を締め上げていると、村上が教室の前のドアから入ってきて。
一直線に櫻井へと駆け寄っていく。
「あ…ごめん。ちょっと急な用事入っちゃってさ…」
「なんやてー!?そんなん、言うてくれなきゃ困るわ~」
「困るわって…別に、俺がいなくたって…」
「あの告白タイム、翔くんがメインやったんやで!?」
「えええっ!?」
衝撃の事実に。
つい、大きな声が出た。
「ん?潤くん、なんや?」
「あ、いや、別に…」
訝しげに振り向いた村上に、慌てて手を振ると。
村上は首を傾げつつ、また櫻井に向き直る。
「D組のマドンナ、まりかちゃん!知ってるやろ!?」
「まりかちゃん…?誰だっけ…?」
「んもーっ!」
「まりかちゃんって、あのまりかちゃんか!?」
いてもたってもいられなくて。
二人の間に割り込んでしまった。
あの子、学年で一番可愛いって噂じゃねぇかっ!?
そんなこが、櫻井を…!?
「そ、そうや。その子、翔くんに告白するつもりやってん!だからな!今日の放課後、D組でまりかちゃんが待ってるっていうから…」
「ちょーっと待ったぁっ!!」