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イチオクノホシ【気象系BL】

第3章 Kissから始めよう


「櫻井っ!待てって!」

どんくさい奴だと思ってたのに、足だけは速くて。

死に物狂いで追いかけ、伸ばした手でその手首を掴んだ。

「離せよっ!」
「離すかよっ!」
「離せ!バカっ!」
「バカってなんだ!」
「バカだからバカって言ってんだろっ!」
「…っ…このやろっ…」

ついカッとなって。

掴んだ手首を、強く捻りあげる。

「痛っ…」

反射的に俺を見上げた瞳には。


もう溢れんばかりの涙が溜まっていて


「え…」


その瞬間

横っ面を平手でひっぱたかれたみたいな感覚に襲われた


「…見るなっ…」

ぼろりと、大粒の涙が流れた。

頭に登った血が、一気に下がっていく。

途端、周りのざわめきが耳に飛び込んできて。

はっとして周りを見渡すと、俺たちを遠巻きに見つめながらひそひそとなにかを話しているギャラリーの数々が…。

「ちょっ…とりあえず、こっちこい!」

急に猛烈な恥ずかしさが込み上げてきて、慌てて櫻井の手を引いた。

「離せよっ!」
「わかったから!離すからっ!とりあえず、場所変えるぞっ!」

睨み付けてくるから、周りを見渡すように顎をしゃくって合図すると。

注目の的になってる自分達にようやく気が付いたのか、口をぎゅっと結んでようやく大人しくなる。

手を引っ張ると、今度こそ素直に歩き出した。

「…ちゃんと歩くから、手を離せ」
「目的地に着いたらな」
「…目的地って、どこ?」
「さぁ…?」

人目を避けるように、駅前を離れ。

駅とは反対方向の住宅街へと足を向ける。

うろうろしている間、櫻井はおとなしく俺に手を引かれてた。

やがて、マンションの傍にある誰もいない公園を見つけて、そこへ入る。

その公園はブランコが二つと滑り台があるだけの、小さな場所で。

そこでようやく手を離し、俺はブランコへ腰かけた。

櫻井は、俺が手を離した場所に突っ立ったまま、俺を睨み付けるように見下ろしてる。

「うわ~、ブランコなんて何年ぶりだろ。懐かしいな~」

わざとおどけた声を出し、ブランコを漕ぐと。

「…子どもかよ」

やっと、櫻井の顔が緩んだ。


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