第3章 Kissから始めよう
メイドカフェのセットと飾りつけをざっと片付けて、あとは後夜祭になる。
「櫻井!後夜祭、出るよな??」
「え~?まあ、多分…」
「絶対に出てな!!」
「なんでだよ?」
「いいから!!嘘つくなよ~!ほな、俺先行って準備するから!」
村上は文化祭実行委員になっているから、どちらかといえばクラスの方より、後夜祭の方がメインなんだ。
「変なやつだな~…後夜祭なんて、どっちだっていいんだけど」
「出るの?」
松本が、俺の顔を覗き込みながら聞いた。
さっきの村上とのやり取り、横で聞いていたくせに…
「かったるいけど、出るかな?松本は?」
「お、俺も、出るよ!もちろん」
「ふふふ…そんなに楽しみなんだ~」
後夜祭では、告白タイムがある。
相手には知らされてないけど、何人か実行委員の方で仕込んであるはずだ。
もしかして…松本、誰かに告白する…とか…?
もしそうだったら……
そんなの見たくない。
俺の『好き』は受け取ってもらえなくても仕方ない。
でも…
別の誰かに告白するのなんか、平常心じゃ無理だ。
見ていられない!
「松本さ…」
「なんだよ?」
………
誰かに告白するのか?なんて、聞けっこない…
『そうだよ』なんて言われちゃったら……
「いや…何でもない…」
「なんだよ~?」
その時。
後夜祭が始まることを知らせる音楽が流れた。
いきものがかり
『123~恋がはじまる~』
♪123、恋がはじまる〜
♪ともだちじゃ、もう嫌なんだ
………
松本がじっと俺を見ている。
……やっぱり…俺…
「…俺、やっぱ、パス…村上に謝っといて~」
「出ないのかよ?」
「うん…疲れちゃったし…帰るわ…じゃあね」
振り返らずに、立ち上がった。