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【SEKAI NO OWARI】 記憶の中に

第2章 帰り道


「彩織ちゃん」

「ん?」

「彩織ちゃん」

「うん」


ずっと一緒にいるから、分かるんだ。

こうして私の名前を呼ぶ時は、彼が少し悩んでいる時。
困った、なんて言わない。
あからさまに助けて、なんて言わないから。

彼は人一倍強くて
人一倍弱いんだ。


「彩織ちゃん」

「うん」

「...空がね、泣いてる。」


たまに、彼は不思議な事を言う。

だってさ、見てみてよ。
雲一つない青空はきらきらと輝いて、例えるなら笑ってるようだよ。
多分、ほかのみんなにもそう見えると思う。

でも、君には泣いてるように見えるの。
いつか、私にも見えるかな。
君の見る世界を。


「彩織ちゃん」


彼はもう一度私の名前を呼ぶと、優しく私の手を握った。
目で見るよりも、ずっと、大きかった。
不意に、その手が震えた気がした。


「帰ろうか」

「うん」


ずっとここに居たかった。
毎日来てるのに今日は特別だった。
手を握られたから、かもしれない。

ただ、この手を離しちゃいけないと思った。
だけど、突然その温もりが無くなった時、
なんだか初めて、悲しいな、寂しいなって。

私の目線の先にいる彼の瞳は、まだどこか悲しげだった。
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