第4章 紫苑の空
プシューーー……
「ありがとう、ヴァイオレット。お前さんのおかげで、ちゃんと思い出せた。もう二度と、あの子を忘れたりせん」
「はい」
ヴァイオレットは、駅で降りたわしを、わざわざ見送ってくれた。
こんな爺にこれから出来ることは少ないだろうが、ヴァイオレットに出会って居なければ何も残らん人生だったじゃろう。
「旦那様、お忘れ物です」
「…もし嫌でなければ、お前さんに貰ってもらいたい。礼の代わりにもならんが、まだまだ現役じゃ。これからはわしの代わりに、お前さんがそいつに世界を見せてやってくれんか」
「……宜しいのですか?」
「あぁ」
プォーー、プォーー
シュッ……シュッ…シュッ、シュッ
「元気でな、ヴァイオレット」
「はい。旦那様もお元気で」
子供の頃、親父に作ってもらった水筒をヴァイオレットに託し、今度はわしがヴァイオレットを見送った。