第4章 紫苑の空
ガタンゴトン、ガタンゴトン…
手袋の中指を噛んだまま手を引くと、鈍い色をした義手が現れた。驚きを顔に出してはいかんと思うたが、一瞬でも目を見張ってしまった。
ヴァイオレットは気付いておらんようだが、それでもわしは、申し訳ない気持ちになった。
「…手袋をしとれば、普通の手と変わらんのぅ。………気を悪くせんでほしいんだが、その…」
「申し訳ありません。手袋をしたままですと、思うようにタイプが出来ないのです」
「いや……すまんのぅ、気にせんでくれ」
「承知しました」
指腹の丸みと、爪の反り返り。
骨ではなく、肉付きのある太さと丸みは本当の手のよう…で……
「…ヴァ、ヴァイオレット……!」
「はい」
「その手を、手を、見せてくれんか」
差し出されたヴァイオレットの手を掴み、平を眺めてはひっくり返し、甲の筋から袖を捲った腕の方まで。ヴァイオレットの義手は、この鉄を鍛えたんは……
「……っ、…っ」
「…旦那様……?」
「……っ、…この手は…どこで……」
「……この手は、最後の作戦で失くたあと、新しいものを装着しました。以前の義手よりも動きがよく、軽くなりました」
「…そうか…っ、……っ…そうか……っ」
『にぃーちゃ!にぃーちゃ!』
「ヴァイオレット……っ、ありがとう…っ」
「ぇ……」
「い、妹が、おったんじゃ…、わしに……っ。あの子も、手が悪くての……。よくわしが、スープを飲ませてやった……っ…それなのに……っ」