第3章 ヒペリカムの咲く庭で
「ミオソティス?」
「……ぁ…、目がすごく綺麗な…ヴァイオレットが試験を受けに行った後にここを辞めた、あの子ですよね」
アイリスとエリカは、代筆の依頼が一段落したカトレアと、代筆部屋で休憩している。そして、社長から告げられたヴァイオレットの不在の理由を聞いていた。
「あぁ、あのちょっと大人しい子!」
「そう、その子。彼女からね、ヴァイオレットに代筆の依頼があったの。両親に手紙を書いて欲しいって」
「ご両親に…。素敵ですね」
「ヴァイオレットの出張代筆も、前より依頼が多くなってるし、ニッコリまでは行かないけど笑うことも増えたし。あたしも頑張らなくちゃ」
やる気を出すアイリスとエリカ。カトレアに元気はない。
「カトレアさん?」
「………ミオソティスのご両親、もう亡くなってるんですって…」
「…ぇ………それじゃあ…」
「それじゃあ、手紙なんて届けられないじゃないですか!」
「そうなの…。でもあの子……。私も、社長に聞いただけだから詳しいことは分からないんだけど…。社長、戦争中は陸軍中佐だったって知ってるわよね」
「……はい…」
「ミオソティスのお父上も、社長と同期の中佐だったんですって。…よく、一緒にお酒を飲んだって言ってたわ。ウマが合う、っていうのかしら。気の合う人だったって」