第1章 蒼い瞳
「どこまで行くんかな?」
「終点まで行きます」
「そうか、そうか。んぅ……どうかな?まだ先は長い。旅は道連れと言うじゃろ?これも何かの縁と思って、ここは1つ、爺の昔話でも聞いてくれんか?」
「……はい」
ガタンゴトン、ガタンゴトン…
ありがとう、と、柔らかい笑みを浮かべて、荷物から水筒とひしゃげたコップを取り出した。
トクトプンッ、トプンッ
「とと、と…、あぁ少しこぼしてしまったのぅ。こうして鉄道に乗るのは好きなんじゃが、どうも揺れていかん」
「注ぎましょうか?」
「んぅ…頼めるかね」
「はい」
トクトクトクトク…
「このくらいでよろしいでしょうか」
「あぁぁそれで十分じゃ」
ヴァイオレットからコップを受け取ると、琥珀色のお茶が7割ほど注がれている。水筒も、と差し出すヴァイオレットに、老士が首を振る。
「また飲むかも知れんから、降りるまで持っていてくれんか」
「…承知しました」
ヴァイオレットの返答に、ニコリと頬を弛めて、それからお茶を飲んだ。両手で包み、器で飲むように、ゆっくりと。
「はぁ~…。ようやっと喉が潤った。そうさな、どこから話そうか…。………ぅん。わしはこの先にある、小さな町の生まれでな。物心ついた時から、親父の鍛冶場が遊び場だった」