第6章 カレとカノジョと、僕の事情
「そうじゃ、なくて………っ」
「?」
なんで薫の気配は感じるのに。
蓮の気配はわからないの?
どちらかと言えば蓮の方が残留思念?とかゆーの?強そうだけど。
地縛霊とか、自分で言ってるくらいだし。
「……でもあなたから、なんだか懐かしい匂いがする」
「ぇ」
「なんでだろうね」
懐かしい、匂い。
『会いたい人が、いるんだ』
ドクン
ドクン
て。
心臓が脈打つ。
これ、あたし?
『繋がってるんだから、感情だって共有してるんだよ』
共、有………。
「………っ」
「どうかした?」
「━━━━ううん」
わかった、かも。
「もう、行くね」
「そう」
「また学校で、巫さん」
「ええ」
「━━━━━っ」
そっか。
そーゆーこと。
だから蓮は……っ。
交差点から離れて。
路地裏へと、足を向ける。
「………蓮」
「どーしたの?」
人気のないところまで歩いてくれば。
案の定蓮は姿を現した。
「蓮。……巫さん、て、知ってる?」
「え………」
「………」
━━━-…ああ。
そっか。
やっぱり。
一瞬崩れた表情。
見逃してない。
すぐに取り繕うくらいなら、はじめから崩したりなんてしないでよ。
「真白?」
「蓮」
ふわりと浮いてる蓮の頬に手を、かけて。
そのまま唇へと口付けた。
「真白?」
「………ご褒美」
「━━━━ぇ」
「会って、来なよ」
「?」
「巫さん。あの交差点にいるよ?」
あたしと繋がって。
実体になって。
彼女に会いたかったんでしょ?
探してたんでしょ?
彼女を。
「………真白、俺」
「行って」
笑えてるでしょ?
ちゃんとあたし、今、笑えてるよね。
「早く」
「━━━━っ、ごめん真白」
「…………」
ああ。
ほら、やっぱり。
懐かしい、って感じたのは蓮の感情だったんだ。
蓮はずっと。
『大切な人が、事故にあったの』
巫さんがそうだったように。
たぶんずっと蓮も。
だから蓮、ずっとあの交差点に。