• テキストサイズ

地縛霊は孕ませたい!?

第6章 カレとカノジョと、僕の事情




「どこいくの?」



窓の外から見える、茜色の夕日。
ワンピース1枚じゃそろそろ肌寒さを感じる夕方。
カーディガンを羽織ドアへと手をかけると。
不思議そうに『蓮』が、声をかけてきた。





「薫にお別れするの」
「………」




途中花屋へと寄ってから。
例の交差点へと、足を向ける。


「………?」


誰か、いる?


そこにはすでに先約が、いて。
ボーとその場所へと、佇んでいた。



「巫……さん」



なん、で。
彼女がここに?


「………あ、これ、は」


声を掛ければ、彼女は無言で振り向き。
視線はすぐにあたしの花束へと、向けられた。


「好きな人がね、ここでなくなったの」
「……そう」



花束を道端へと備え、手を合わせる。
すでにその場所にはいくつかの花束が備えてあって。
今更ながら薫がいなくなった事実に胸が苦しくなる。
だけど決めたんだ。
前に進むって。
ちゃんと、受け入れるって。
だから。
薫にちゃんと、報告、したかった。
「大丈夫だよ」って。




「巫、さん、は?」
「え」



手を合わせ終わって。
立ち上がる。



やっぱり彼女、懐かしい感じがする。


「………」

「大切な人が、ここで事故にあったの」

「………そっか」
「ええ」
「…………」



哀しそうな、瞳。
巫さん、蓮の気配感じてたって言ってたけど。
その大切な人の気配は、わからないのかな。


「恋人の、霊だったのね」
「ぇ」
「あなたに付いていた霊」
「ぇ」
「今はもう何も感じないもの。あなたも吹っ切れた顔してる」


「………」



巫さんが感じてたのは、薫?
蓮じゃ、ないの?


「どうかした?」
「ねぇ今は?あたし、今なんにも憑いてない?」
「………」

切羽つまったように攻めよるあたしに驚いたように目を動かして。

「残念。もう恋人の気配は感じないわ」

大きな誤解をしたまま、悲しそうに彼女は笑った。
/ 115ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp